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ふであと

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徒然なるままに、もの書き。

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第四章 「光の英雄」_30 

 心に口を空けた穴は予想外に大きく、思っていた以上にシグムントの存在が大きくなっていたことにカペルは気づかされた。何故だろうと問う自分に答えられず、カペルはただ、呆然とするしかなかった。
 もしアーヤがいなかったらどうなっていただろうか。日が暮れて、月が星空に映える時間まで途方に暮れていただろうか。そのまま何もなかったと自分に言い聞かせて、どこかへ姿を暗ましていただろうか。
 ともかく、アーヤはそこにいた。
 空いた穴は消えなくても、こうして埋め合わせてくれる誰かがいる。他人と関わろうとしなかったままの自分なら、こんな穴が空くことも、埋めてくれる相手に出会うことも無かったのだろう。胸の内に湧いた熱を確かめ、それなら自分が誰かの穴を埋め合わせることだって出来るんじゃないか、と胸中に呟いたのもつかのま、その答えは目の前の女の子がすぐに教えてくれた。
 無理矢理こんなところに引きずり出してくれた、ちょっと強引な女の子。自分勝手というか、自己中心的というか。そのくせ素直で、だけど不器用で……。
 シグムントの剣を受け取り、そこに二人分の体温を見つけたカペルの胸の内に、生まれて初めて、自分がやらなければならないことがはっきりと浮かんだ。正直に言って、荷が勝ちすぎていると思う。どこまでやれるかなんてわからない。だけど、やれるだけやってみようと今は思える。
「僕が鎖を斬るよ」
 アーヤにそう告げ、カペルは月の鎖を見据えた。あと何本あるのかも知らない、自分には関係ないものと思っていた巨大な鎖。世界を腐らせるそれを、新月の民の希望を象徴するそれを、カペルは見据えた。
「僕が……」
 シグムントの代わりに、それを斬る。
 そう決めてしまえば、迷うことは何もなく、カペルは自然と走り出した。
 思いが絶叫となって口をつき、上段から振り下ろした剣に手ごたえとなって返ってくる。何度か見たそれと同じように爆散した月の鎖が、光の粉となってヴェスプレームの塔を包みこむ。
 それは、戦いの終わりを告げる光の雨だった。
 振り返ると、目を赤くしたアーヤの姿が見えた。
 彼女だって悲しいんだ。そんな当たり前のことにようやく気づいたカペルが、「ありがとう」と礼を言おうとした――

 瞬間、世界が激震する。

 塔自体が身をよじるような激震に次いで、腹の奥底をざわめかせる重低音となった微震があたりを包み込み、塔の構造物の継ぎ目全てから光の粉がこぼれ出した。それはまるで月の鎖が消えるときのそれで、だからこそ、嫌な予感が喉の奥にせり上がってくる。
「ヴェスプレームの塔が……崩れる!?」
 その言葉と同時に、二人の足下がぐらりと揺れた。
 揺れたというには大きすぎる、崩れ落ちる感触。
 堰を切ったように波打つ床を蹴って、カペルは考える前に走り出した。みるみる消え行くアーヤの姿を目で追い、最後まで見えていたその手に飛びついた刹那、カペルを支えていた最後の足場が崩落を始めた。

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